« 日曜日は第4回門司ブリックミュージックBOX | トップページ | 重かった・・・ »

2008年4月18日 (金)

撮影ノート 門司港紹介の小文として

おはようございます。門司港の魚住です。

一年前、写真専門誌「日本フォトコンテスト(現 フォトコン)」の五月号の巻頭口絵を担当させてもらったのですが、その時コーナーの最後に書いた「撮影ノート」のオリジナル版がアウトルックエクスプレスの中から出てきました。
http://goka.cocolog-nifty.com/mojiko/2007/04/5_3b47.html

もう娘も夕陽を見て「トントン」とはいいません。子供の成長は早いものだ、と思います。

雑誌に掲載された最終版はこちらに置いております。若干変更しましたので比較すると面白いかも、とか思いましたので、オリジナル版はこちらに置いておきます。
こちらで紹介したデジクリ掲載の小文は、このあとがきのようなものでした。

-----------------------------------------------

「トントン、バイバイ」

 居間でこれを書いているが、窓外でビルの狭間に夕日が海峡へ沈む。二歳になる娘は、この時間になると窓際まで駆け寄って手を振り叫ぶ、「トントン、バイバイ」と。

 門司は、夕日が美しい。海と空を黄金に染めて対岸の下関の向こう、かつて「北九州工業地帯」と呼ばれた市内工場群の向こうに陽が沈んでいく時間は、自然の景観が人の営みと交わる得がたい風景になる。

「門司について知っている二・三のこと」

 門司は九州の北の端、企救半島にある。太古に断層の活動により生まれた土地は、そそり立つ山を背負い平地は水際に紐のように細いのみ。難所とされる関門海峡を挟み、本州西端の下関と対する。瀬戸内を外と分かつ九州の入り口である。爾来交通の要所とされ、朝廷がここに「文字の関」を置いたのは大化二年という。その後、大内・毛利という政情の安定を得て整備されてきた対岸と異なり、長く衰退するに任された松林と塩田の地であった。
 門司が今に続く歴史を歩み始めたのは北九州に近代産業が育成される明治からである。特別輸出港に指定され基点となった九州鉄道が開通、日本の西の玄関として整備された。塩田は市街となり海岸も沖まで岸壁となり、銀行商社も進出・起業され華奢なビルが立てられた。
 門司へ数多の人が惹きつけられた。裸一貫門司で稼ぎ、金を貯めて大陸へ渡る夢を見た若者も闊歩していただろう。料亭や歓楽街も生まれ、昭和前期の門司は不夜城の如く華やかに殷賑を極めていたという。その頃、門司は神戸や横浜に次ぐ国内四位の貿易港である。アジア近代化の先端地であり、フロンティアへの夢見る跳躍台であった。
 しかし、先の大戦で海峡は数多の機雷で封殺され市街は灰燼に帰した。敗北と冷戦で大陸と絶縁し門司は交易相手を失う。関門トンネルや関門橋・山陽新幹線の開通で、本州と九州を繋ぐという古代以来の交通上の意味も失い、門司は通過中の車窓に映る景色にすぎなくなった。
 1988年、門司港駅が国の重要文化財に指定された。駅舎として初であった。これを契機に大正・昭和の残影を観光に活用する「レトロ事業」が計画され、建造物の集約・整備が行われた。現在では毎年150万人余の人々が訪れる、かつての港湾の栄えとは違う形で北部九州の顔的な存在である。

「門司港の明日について思うことなど」

 ここまで書いたところで日は沈んだ。娘も騒々しい挨拶はやめて、再び積み木遊びに熱中しはじめたようだ。
 門司の将来は分からない。貴重と思う建物も風景もあるが、無主であればいずれ毀されることは防げない。そして眼前から消えてしまえば、多分記憶からも消える。しかし変わっていくことは停められない。
 最近、娘が大人になったときに、この街のことをどう思うだろう、と考える。浜田省吾さんの唄に出てくるような、何もなく脱出したいばかりの故郷、みたいなことでは寂しい。
 遠い将来、世界のどこかで、娘がたまたま門司港を撮った古い写真を見て、今に続く幸せの始まりの地として門司を思い出す。というのは写真をめぐる素敵な想像である。

 そんな一枚を後世に残してくれる貴方を、この街は待っています。

-----------------------------------------------

写真は掲載誌面、巻頭コーナーの最初のページと最後のページ。

それと、昨日撮影した、雨の坂道を帰る妻と娘


2008_0417_img354

2008_0417_img352

2008_0417_img349

|

« 日曜日は第4回門司ブリックミュージックBOX | トップページ | 重かった・・・ »

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/137940/40912330

この記事へのトラックバック一覧です: 撮影ノート 門司港紹介の小文として:

« 日曜日は第4回門司ブリックミュージックBOX | トップページ | 重かった・・・ »